韓国のアイドルグループオーディション番組、Boys Planetの話。
中国人練習生クリスティアンが恣意的な編集(俗にいう悪編)をされたといわれる、G「Back Door」ビハインド。このくだり、ずっと引っかかっていた。
全員中国語が分かるから中国語で話す→分かる
全員英語が分かるから英語で話す→分かる
英語が分からないメンバーもいるし中国語が分からないメンバーもいる→何で韓国語が共通言語にならないの?何で言語が十分じゃないというハンデをみんなで負わないの?まして自分たちがやろうとしているK-POPの本場の国に来ているのに。
言葉が拙くても、伝えたいという気持ちはないの?分かりたいという気持ちはないの?
Boys Planetに参加しているGグループの練習生の全てが、事務所所属の恵まれた環境で韓国語が勉強できたわけじゃないというけれど、
韓国語に堪能かどうかじゃなくて。知っている単語をかき集めてでも伝えたいことがあって、分かりたいことがあって、でも言葉を尽くしても伝わらないことを伝えたくて音楽をしているんじゃないの?って思ったんだ。
言葉を乗せる土台の気持ちがあるのかを貴方に尋ねたいんだ。
翻訳機を用意しないのが悪いor翻訳機を用意する分だけコストがかかることを意識しない方が悪い、という意見も聞いた。
そうではなくて・・・翻訳機がもどかしくて、翻訳機なんていらないと投げ捨てて、中学生程度の単語の羅列ででもコミュニケーションをとろうとした彼のことを思い出したりしたんだ。
Boys Planetに参加した15歳のタクト。タクトよりも韓国語を話すことが出来る外国の参加者は割といたんじゃないかと思う。
すっかり有名になった、トヨナガタクトという独特な節回しに乗せて自分のことを指さす自己紹介(0:55~)シグナルソングのエンディング妖精でも、初回評価でも、本編でもことあるごとに出てくる。
トヨナガタクトの節回しは彼の卓越したセンスなんだけど、これって「トヨナガタクトっていいます。僕です(と親指で自分を指さす)」という自己紹介なんだよな。
自分の名を名乗り「怪しいものじゃありません、覚えて下さい」という自己紹介。
タクトのシグナルソング再評価で、グヨン先生が彼のセンスを見込んで1スターを与えたエピソードが自分は大好きで。
シグナルソング「Here I am」タクトチッケム
1スター、下の方で踊っている彼。正直ダンスは、拙い。腕が縮こまっているところや、体のラインがぶれてるなって思うところもいくつかある。自分の素人目で見ても。
グヨン先生に褒められたのは0:23ぐらいの振りのところ。
「タン、タン、タン」というAメロの歌に入る直前のイントロで、顔の前で両腕を大きく上下に開ける振りなんだけど、腕を上下に開けた時にタクトはウインクするんだよね。そのアレンジをグヨン先生に褒められてた。
「初めてお目見えする練習生、どんな練習生なのかな?」という期待が視聴者にある。そして両腕という扉が開いて、練習生の顔がフォーカスされる。
「僕、トヨナガタクトっていいます。覚えてね」という振りとアピール(ウインク)をここでもタクトはしているんだ。
彼はダンスはまだまだ拙い。タクトより上手い練習生はたくさんいる。でも彼は凄く愛されている。
それは彼が、異国の地で自分を分かってもらいたくて、自分のことを伝えたいということが、放送で伝わっているからだと思う。
最後に、クリスティアンの悪編といわれる動画は切り貼りしたものだから、実際にはきっと彼らも韓国語を交えて話していただろう、放送されてないだけという意見について。
それは分からない。していたことが映されていない、放送されていないかどうかは分からない。
ただ一ついえることは「していないことは、放送しようもない」ということだけ。
だから「彼はそんなことをするような人じゃない」というのは、ファンが信じるよりほかないんだよね。
ファンが誰よりも彼のことを見ているはずだから。好きなんだから。
演者の仕事って「見せる(魅せる、ともいう)」ことだと思うんだ。歌でもダンスでも演技でも、自分が見せるものでお金を貰ってる、稼いでる。
自分が見せたいものでお金を稼げない人が、その分だけ見せたくもないプライベートを切り売りしている印象もある。
では、演者が努めることが見せることなら、ファンのつとめは何?
「見てあげること、信じること」だと思うんだよね、自分は。
(概念的な話ですよ。物質的な話「買って支える」とかはそれはそれで別に、大いにいいこと)
ファンでない一般の人よりも、ファンだからその人のことをずっと考えている、ずっと見ている、細かなところまで。ファンだから気がつくことがある。
好きになったら好きな人のことを知りたいと思って、その人の過去のライブ動画とか、ファン限定でないと追えない情報や、課金やログインをしないと見られないサイトで知識を増やすのもまぁ、ありなんだけど、
それでファン同士でマウント取ったり取らなかったりも、どうでもいいんだけど、
過去を知らなくても予備知識がなくても、凄く鋭く推しの本質を見ている人が時々いる。本質っていうか、他の人が何となく見ているだけでは分からないことに気付く人がいる。見ているものや知っていることが少なくても、深い。
自分が「好きなんだなぁ、愛があるんだなぁ」って思うのは、そんな時かな。
他の誰とも違う貴方だから、貴方のことを知って、覚えて、好きになったんだよ。
他の誰とも違うダンス、他の誰とも違う歌声でステージに立つ貴方を。
貴方が伝えたくてたまらないことを、知りたいだけなんだ。
「貴方はどうして今ここにいるの?」
オーディションに参加した元々の意思は動機はそれぞれだろうけれど、
せっかく冬の韓国に来ているのに、K-POPの歌に出てくる雪や寒さを肌で感じられるチャンスなのに。
K-POPのオーディションを勝ち抜くために(悪編されないように)必要に迫られて韓国語を話さなきゃじゃなくて、貴方がステージでカバーする曲が生まれた国のこと、その国に住む人々がどんなことを感じているから、あなたも好きなK-POPがこんなに支持されているのか。そんなことに思いが及ばずに帰ってしまうのは勿体ないよ。
韓国語の初雪という言葉に込められた意味を知った時、凄く素敵だなぁと自分は思ったんだけど、冬の韓国の寒さが身に沁みたら、初雪という言葉に込められた切実で祈るように求める気持ちも、より一層分かるんじゃないかな、なんて思う。
韓国の初雪は淡雪なのかボタン雪なのか、韓国に行ったことのない自分には想像もつかない。でも彼らは宿舎の外に積もった雪を触ることが出来るんだ。
そんな風に韓国に行って感じたものを持ち帰って歌うK-POPは、韓国に行く前とはきっと違う感覚や感情を込めて歌えるようになるんじゃないかな。
アニョハセヨという言葉は単にニイハオやこんにちわを言い換えた挨拶言葉じゃなくて、Boys Planetが終わり各々の場所へと帰っても、ひとたびアニョハセヨと口に出せば、挨拶を交わして一緒に練習をした友達の顔が浮かぶようになるんじゃないかな、なんて思う。